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能力以上に大切なもの

 昔、塾講師から予備校講師に転身しようとしていたときに、私のホームグラウンドになった関西文理学院(関文理)のほかに駿台にも採用試験を受けに行きました。
 確か1人の採用枠に30人ほどが受けに来ていたと思います。
 試験は筆記試験と模擬授業の2つでした。
 まず筆記試験があり、そこではかなり難しい問題を解かされましたが、何とかそれを解いて模擬授業に進んだのは私ともう1人のたった2人だったと思います。
 正直言って、受かったと思いました。筆記試験で負けることはあっても、模擬授業で負けるはずはないと思っていたからです。
 ところが落とされたわけなんです。
 ショックでしたねぇ!

 その後、関文理でD先生と親しくなり、この人から多くのことを学ぶことになりました。
 テキストの作り方や、TEX(数式の組版ソフト)の使い方、それから数学一般について沢山教えてもらいました。
 この人は天才です。
 たとえば、京大の入試問題の解答速報は6人の数学講師が集まって作りましたが、D先生がいたら、6人なんて全く不要です。何故って、文理合わせて10問(理系6問、文系5問で全11問ですが、共通問題が1問あるのが普通なので10問になります)の模範解答を約1時間で作ってしまうからです。それも昨今のように簡単になった京大の問題ではなく、かなり難しかったときの話です。
 常に3000問ぐらいの入試問題がデータとして頭の中で整理されていて、必要に応じてポンポンと出てくるわけです。
 授業も極めて理詰めで、板書をそのまま写せば整理されたノートが出来上がると生徒たちが言っていました。
 一緒に京大の問題を解いていたら、強烈なプレッシャーを受けて、背中から汗がたら~と流れるのを感じました。
 そりゃあそうでしょう。問題を読むなりカンカンカンとD先生の鉛筆が動き出したら、どれどれ … なんてじっくり考えておれないわけです。
 一度この経験をした次の年から解答速報の作成時には、絶対にD先生の隣に座るのはやめました。

 まあいろんな思い出がありますが、このD先生が、私が駿台の採用試験を落とされたときのもう一人だったのです。
 仕方がないですねぇ。
 この人に負けたんだったら納得がいきます。

 その後私は稲荷塾を立ち上げ、少しずつ軌道に乗せて行きました。
 同じ頃、D先生もいくつかの塾を立ち上げては壊すということを繰り返していました。
 D先生の企画力、行動力、そして何より圧倒的数学の実力からすると不思議でなりませんでした。
 「なんでなんやろなぁ?」
 私がこぼしていると、もう一人の恩人、奥野さん(私に無理やりテニスを始めさせた人)が言いました。
 「そんなこと分からへんか? 保護者が稲荷さんの所へ来るやん。しほちゃんのかわいい靴が玄関に置いたるやん。それで勝ちや。稲荷さんはDさんの数学がすごいと思ってるかも知れんけど、保護者にそんな違いが分かると思うか? 保護者が見てるのはそういうこととちゃうで。この人がちゃんと責任をもってくれるかとかそういうことや!」
 
 う~む、そうなんでしょうか?!

 そのときはよく分かりませんでしたが、今にして思えば、やっぱり奥野さんが言っていたことが正しかったように思います。
 昨日もネットの利用について、デメリットを心配するあまり、メリットを消去してしまうのではなく、親子の関係を近くすることで乗り越えてほしいと書きました。
 人は本当に弱いものです。いくら能力があっても、その能力で全てが解決するわけではありません。
 特に苦しいとき、真に自分を支えてくれるものは何かと考えてみれば、家族のつながりを基盤にした心の強さ以外にはないことを実感します。

 子どもがこの強さを持てるように、親は全面的に頑張って行きましょう!

 
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プロフィール

inarijuku

Author:inarijuku
稲荷塾について
東大・京大受験のための数学専門塾

著書:
稲荷の独習数学
教学社 




頭のいい子には中学受験をさせるな
メディアイランド




驚きの東大合格率
小さな数学塾のヒミツ
東洋出版

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